昨年の今頃はまだRoon Optimized Core Kit(Roon ROCK)は使っていませんでしたが、RoonのUI(ユーザーインターフェース)の利便性はすでに享受していましたね。膨大なライブラリから聴きたい曲を瞬時に探し出し、関連情報やアーティスト情報に飛べる快適さは、従来のオーディオ体験を一変させました。
当時の音質もある程度満足できるものでしたが、やはりその段階では「便利さ」が「音質」を上回っていたというのが正直なところでしょう。
CDプレーヤーという「完成された装置」との格闘
しかし、オーディオ好きとしては、その便利さに加え、「音質」も妥協したくないという欲求が湧いてくるものです。
10年前からは一つの完成形とも言えたCDプレーヤーの音がありました。それ以上の音を目指すとなると、Roonのようなネットワークオーディオの世界では、一筋縄ではいきません。
Roonの潜在能力は非常に高いものの、その性能を完全に引き出すためには、Core(サーバー)、ネットワーク、出力デバイス、電源、ケーブルなど、多岐にわたる要素への対策が必要になってきます。
試行錯誤がもたらす「良い音」
私が試行錯誤を重ねてきた結果、今は「結構な良い音」になってきたと感じています。具体的には、
- Roon Coreの最適化(Roon ROCKの導入)
- ネットワーク環境の整備(Wi-Fi中継器をイーサネットコンバータにする)
- 電源ノイズ対策
- Roonの設定調整(DSP設定、アップサンプリング)
- 新しいDACの導入とパワーアンプダイレクトで接続
などが功を奏したのではないでしょうか。特にRoon ROCKは、Roon専用OSとしてノイズや負荷を低減し、音質面で大きなアドバンテージをもたらしてくれました。
ネットワークオーディオは「調整の楽しさ」が醍醐味
この試行錯誤こそが、オーディオ趣味の醍醐味ですよね。
ネットワークオーディオにおける様々な対策は、ある意味、アナログプレーヤーの面倒くささに似た側面があるのかもしれません。アナログプレーヤーがカートリッジ、トーンアーム、水平出し、針圧といった物理的な調整を必要とするように、ネットワークオーディオもまた、サーバー、ハブ、ケーブル、ノイズといった電気的・論理的な調整を求められます。その点CDプレーヤーというのは、特別な調整をあまり必要とせずに改めて完成度の高いオーディオだと思います。簡単にかなりの高音質が手に入ります。下手なパソコンオーディオのハイレゾよりもCD音源の方が良い音に感じますね。パソコンとかネットのノイズが全く入らないということで実現しているのです。ただ、最新のDACの技術のここ10年の進歩が著しく、デジタルをアナログ変換する機能の部分においては、現代のCDプレーヤーの方が優秀なのでしょう。
Roonのようなネットワークオーディオは対策をしないとCDとは違うノイズがはいってきます。その分ノイズを省くための調整の一つ一つが音に明確な変化をもたらし、手間をかけた分だけ音が良くなっていくプロセスは、何物にも代えがたい楽しさがあります。今では単品のCDプレーヤーの音質を完全に超えたと実感します。
便利さに音質が追いつき、そしてそれを超えていく—。Roonを使いこなす旅は、まだ始まったばかりかもしれません。
