ジャズを愛する者にとって、オーディオは単なる音を再生する道具ではありません。それは、ミュージシャンの魂と聴く側の感性を繋ぐ、まるで調律師のような存在です。
ジャズを聴くとき、私はオーディオに深いこだわりを持ってしまいます。そのこだわりは、まるでピアノの調律をするかのように、自分好みの「音」を追求する喜びへと繋がっています。
ベースの「しっとり」とした響き
ウッドベースが奏でる、あのしっとりと深みのある音。弦の振動が空気を震わせる感覚まで、クリアに感じたい。重心が低く、しかし決してこもらない、ベースラインのグルーヴが身体に染み渡るような音を追い求めています。
ピアノとギターの「繊細さ」を表現する音
そして、ピアノ。鍵盤を叩くタッチの強弱、ペダルを踏んだ時の響きの変化、ハンマーが弦を叩く音。ピアニストの繊細な表現力をオーディオに求めます。
さらに、ギターの音にもこだわりがあります。ピッキングの瞬間、弦がピックに弾かれるカリカリ」としたアタック音。この音が鮮明に聞こえることで、ギタリストのテクニックや情熱がダイレクトに伝わってきます。生々しい響きが、ジャズを聴く醍醐味を一層引き立ててくれるのです。
ドラムの「重み」を感じるシンバル
ドラムの音もまた、私のオーディオ体験に欠かせない要素です。ただうるさいだけの派手な音ではなく、シンバルの一打一打に芯を感じる重たい音が理想です。シンバルを叩くスティックの先端が、シンバルの表面を捉え、その振動が重みを伴って伝わってくる。その後に続く「シャーン」という響きも、空間に美しく広がる。ただの高音ではなく、金属の塊としての重厚感が感じられるシンバル音こそ、ジャズのリズムセクションに深みを与えてくれるのです。
オーディオは「第二の調律師」
生の音をそのまま忠実に再現するだけがオーディオの楽しみではありません。私は、オーディオを「第二の調律師」のように捉えています。それから、自分の楽器として捉えてます。
ピアノの調律が、その楽器の個性を引き出し、奏者の意図をより深く表現するように、オーディオもまた、私の好みに合わせて音を「調律」する楽しみを与えてくれます。温かみのある音、クールでシャープな音、広がりを感じる音… 機器の組み合わせやセッティングで、無限の音色を生み出すことができるのです。
ジャズを聴く時間は、私にとって、ただ音楽に浸るだけの時間ではありません。それは、自分だけの音の世界を創り出し、その中で五感を研ぎ澄ます、至福のひとときなのです。